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木曽を語る

「世界遺産の資質が木曽には間違いなくあると思う」

木材業 池田木材株式会社 池田聡寿さん

木材業 池田木材株式会社 池田聡寿さん

2015年に公開された『うみやまあひだ』という映画がある。

二十年に一度行われる伊勢神宮の式年遷宮を長期にわたり追い続けた写真家宮澤正明氏が、神秘的な遷宮行事や木曽の檜美林等を圧倒的な映像美で描くとともに、大学教授・営林家・漁師・料理人・脳科学者等、様々なジャンルの人々が語る「山と海」「人と自然」についての想いをタペストリーのように紡いだ映画で、外国の映画賞も受賞し注目された作品だ。

この中で、映画監督でタレントの北野武氏や、新国立競技場のデザインも手掛けた建築家の隈研吾氏らと共に語り手の一人として映画に参加したのが、木曽郡上松で木材業を営む池田聡寿さんだった。

「映画では数分に編集されてしまったんだけど、撮影の時はそれこそ結構な時間喋ったんだよ」

池田さんは生業としてだけではなく、木曽をもっと俯瞰した視点から、檜を、森林を、そして地域全体を見つめてきた人でもある。その想いは自然と溢れてくる。

「俺のやり方っていつもそうだけど、自分で出かけて行って自分の目で実際見て、価値判断するための尺度を作るんだ。世界自然遺産の屋久島や白神山地にも行って、その森を見てきた。そのうえで木曽の森を客観的に見て、これなら木曽も世界遺産を目指せるんじゃないかって真剣に思ってる。」

木材業 池田木材株式会社 池田聡寿さん

木材業 池田木材株式会社 池田聡寿さん

「良材を育んできた森林の文化、中山道の街道文化、御嶽山の山岳信仰の歴史、そういう貴重な〝宝物〟を、複合遺産としてちゃんとプレゼンテーションしていけばいいんじゃないかな。」

伊勢神宮の遷宮用材であるご神木を木曽の山奥で伐り倒す厳かな式典にも立ち会ってきた。山人が「木を寝かす」と表現するその瞬間、大樹は「ぎぃ~」という声を出し「泣く」のだという。その神聖な「泣き声」を直に脳裏に刻んできた池田さんの言葉には、木曽山の銘木を代々扱い続けてきた材木屋だからこその責任と想いを感じる。

夢があると言う。

「木曽に世界レベルで森林環境を学ぶ大学を誘致したいんだ。林業だけを学ぶ時代ではもうなくなってきている。山・川・海、その繋がりを自然環境を考える視点で研究していくのが大切だと世界的に理解されてきているし。だから、木曽に山の大学、木曽川下流域の愛知県一宮あたりに川の大学、伊勢あたりに海の大学があればどうだろう。その地域の若者がそこで学べば、その人がやがてその土地に残り地域の産業に就いてくれるかもしれない。アカデミックな人々が旅人として木曽にもきっと来てくれるしね。」

木曽檜

作業風景

山を守り、山に生きる覚悟を語るその人の横で、木曽山の銘木たちは、ごろんと、そして泰然と、次の活躍の場へ運ばれるまでの眠りを貪っていた。

池田さんと木曽ひのきの大樹

池田さんと樹齢千年以上の木曽ひのきの大樹

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