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すんき名人は地域のげんき名人!

すんき漬け 野口広子さん

野口広子さん

野口広子さんは木曽町新開の「ふるさと体験館きそふくしま」で、木曽の冬の味覚の風物詩「すんき漬け」の作り方講座の講師を務めるすんき名人だ。
「すんきの魅力は何といってもその美味しさ」と野口さんは言う。
「300年以上の歴史があるんです。美味しくなかったら今日まで続いてこないでしょ。」

なるほど。だからこそ木曽では、毎冬すんきの名人・達人を選ぶコンクールまで開催しているのだろう。塩を一切使わず前年のすんきの「種」を仕込みに使い乳酸菌発酵させて作るすんき、その味の基本は「酸っぱさ」だ。ただ、その酸っぱさの中に潜む「旨み」を引き出すため、「すんきチャレンジャー」達は毎年試行錯誤を繰り返しているのだそうだ。〝美味しいすんきを作れる〟は、木曽では間違いなくステータスになる。
「コンクールで達人に選ばれたくて毎年作っている人もいてね。“達人になったら私作るの辞める!”なんて言って」
そう言って野口さんは笑う。

四十数年前、野口さんは今暮らしている木曽町福島の黒川の里へ嫁いできた。農業を営む家もあるその里の先輩たちは当時皆元気だった。
農家の暮らしが変化していく時代だった。収入を農業以外にも求められ、食料も自給ではなく買ってこられるようになり、やがて畑の作物も、それを作る労力さえも持て余してしまうようになる中で、
「私たちのやりたい気持ちを何とかしてくれ」
そう里の人達に頼まれ、野口さんが事務局となり、里を貫く国道沿いで野菜の無人市が開かれた。開田高原や「きそふくしまスキー場」を目指す車が行き交うという地の利もあり、無人市は盛った。新鮮な野菜、山菜、置いておけば何でも売れたそうだ。さらに、自分たちで開発した餅団子を笹の葉でくるんだお菓子「笹っこ」も好評を博し、観光客も、行きがけ帰りがけに足を止める里となっていったのだった。

「朝5時、隣の家のおばあちゃんに起こされたりしてね。今日はキュウリを出したいんだけど何本持っていけばいい?って」
そう振り返り、野口さんはやはりしみじみ嬉しそうに笑う。

「土地の食と農は繋がっているから、農業が変わってしまうと食も変わってしまう。だから、私より上の世代の人達の話を、もっと大事に聴いとかなきゃいけないって思うのよ。何が美味しかったとか、どんな物を作って食べた、とか。それを今の若い仲間たちにも伝えていきたい。」

すんき 

「地域の食の伝道師」そんな風に思える野口さんに、美味しいすんきを作るコツを尋ねてみると…
「すんきの乳酸菌にそっぽを向かれないこと…かな」
素人にはハイレベル過ぎる答えが返ってきた。
…まずは、オイシク頂くところから始めることにしよう・・・。

すんき 

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