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14県宝山下家

県宝山下家

ストーリー

木曽馬馬主で知られる山下家は、馬主で沢山の馬を所有していて農家に貸し与えていた。農家は、仔馬を育てることでも収入を得ていた。

概要

県宝山下家住宅は木曽谷三大持馬の家の1つに数えられている。
本棟造りの破風と懸魚が特徴の旧家。
囲炉裏や正座敷の書画、馬医に関する書類等、往時を偲ばせるものが多く残されている。

観光ポイント

山下家住宅は、江戸時代末期に建てられた家をほぼ原形で保存する長野県宝。山村には珍しく、贅を尽くした本棟造りの破風と懸魚が特徴。囲炉裏や正座敷の書画など、往時を偲ばせるものが数多く残されています。
隣の考古博物館には、旧石器から縄文時代の土器・石器を展示するとともに、模型やジオラマを使って、昔の開田高原の営みを紹介。

  

現地レポート

加村金正さんが

加村金正さん

開田の集落の中に、一際大きなお屋敷が建っていました。
中に入るとその広さに驚きます。

県宝山下家を館長の加村金正さんが案内してくれました。

山下家について教えてください。

江戸時代に建てられました。山下家の祖先は、飛騨高山藩の馬奉行に仕えていた人で、「伯楽」と呼ばれた馬のお医者様です。木曽馬の馬主として、多い時には300頭も飼っており、馬の小作制度をおこなっていました。

 

農家へ馬を貸し出て、農家では農耕馬として使い、子供を繁殖させて木曽福島の馬市へ出すんです。その馬を売ったお金で生活をしていたのが開田村です。
馬の売り上げ金の1/4が農家、3/4が馬主の山下家に入っており、毎年毎年100頭近い仔馬を売っていたそうですから、江戸時代にこれだけ立派なお屋敷が建ったわけです。広さは140坪ありますよ。

昭和に入ると馬の需要が少なくなり、広い屋敷を利用して民宿を始めました。民宿は30年ほど続き、平成3年まで民宿として使われていました。
平成11年に後継ぎが居なくなり、山下家は途絶えたんです。

外にある立派な石碑
とても広い室内はいろりのすすで黒光り

とても広い室内はいろりのすすで黒光り

江戸時代に建てられたそうですが、とてもきれいですね。

この家はとても強く造られています。床下は石が隙間なく敷き詰められていて、地面からの湿気が上がってこないようになっています。今でこそコンクリートで基礎を固めますが、江戸時代に同じような工法が使われていたんです。天井は6尺おきに梁が通っていて、梁の中に桁が喰い込むように入っているでしょう。これは地震に強く横揺れしないんです。震度7の地震でも大丈夫ですよ。普通の家はこのような造りはしません。

室内が黒光りしているのは、いろりからの“すす”によるものです。木材が燻製のようになることで腐らず虫がつきません。雨漏りしないよう屋根のメンテナンスさえすれば、まだまだ200年は大丈夫ですよ。

 

ですが、この家は木曽五木は使われていないんです。ナラ、ツガ、松、栗などを使っています。建設時、尾張の殿様が木曽五木を使ってはいけないという禁止令を出したんですね。乱伐を避けるためもあるでしょうが、木曽の檜やサワラは高く売れるので、神社やお寺に高く売っていたためです。
伊勢神宮の材料は木曽の檜ですよ。
その代り、外の土蔵は明治24年に建てられたものですが、総檜造りです。このような土蔵はざらにはないですよ。

厩

「うまや」に馬を飼っていたそうです。

掛け時計

アメリカ製の掛け時計

囲炉裏の自在鍵

囲炉裏の自在鉤は江戸時代のハイテク

袋戸棚

金箔が施された袋戸棚

 

お屋敷の広さも然る事ながら、室内の調度品もすごいですね。

あの掛け時計は「MADE IN USA」アメリカ製ですよ。ねじを巻けばまだ現役で動きます。
いろりの上から吊るしてある「自在鉤」(なべ・かまを吊るす部分)は、飛騨の鍛冶屋の打ち出しで、上下自在に高さが変えられ、360度鉄瓶を回すこともできる江戸時代のハイテクですよ。
客間の袋戸棚には金箔が施されていて、展示してある食器は輪島塗の一級品です。

立派な屏風

大きな屏風にびっくり!

そして、高さ180cmはあろう見事な金屏風を見せていただきました。
金を施した和紙は1000年は大丈夫だそうです。飾られた和紙に描かれているのは、馬の調教の仕方を教えたもので、400年経っているとは思えないほどきれいな金屏風でした。

加村さんがひとつひとつ丁寧に教えてくれました

江戸時代にこれだけの家や調度品を持てるとは、相当お金持ちだったんですね。

当時、村の総予算と山下家の馬の売り上げ金が同じくらいだったそうですから、かなりの富を持っていたでしょうね。幕末には、財政が厳しくなった武士・代官が山下家のお金を目当てに、頼母子講(今でいう無尽)を作ってお金を借りに来ていました。証文も残っています。実際には返す当てのないお金ですがね(笑)。

山下家のすばらしさについて教えてください。

江戸時代の建物が、これだけの状態で残っていることがすばらしいですね。現代でこれだけの建物を作ろうと思っても作れないでしょう。建築家の方々が見学に来た事もあるんですよ。外国の方が来ることも増えました。

贅を尽くした山下家の歴史や当時の建築技術の高さなど、とても貴重なお話をたくさん聞かせていただくことができました。

  

見どころ

となりの開田考古博物館には、旧石器から縄文時代の土器・石器を展示するとともに、模型やジオラマを使って、昔の開田高原の営みを紹介。特に、柳又遺跡から出土した希少な旧石器類は必見です。


 

アクセス

最寄駅・インターから

JR木曽福島駅から

バス・徒歩 約60分

中央自動車道伊那インターから

伊那インターから約80分

住所

山下家住宅

長野県木曽郡木曽町開田高原2730番地5
TEL:0264-44-2007



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